RSTPとは


RSTP(Rapid Spanning Tree Protocol) は、
従来の STP(Spanning Tree Protocol, IEEE 802.1D) を改良して、
高速に収束(経路切り替え)できるようにしたプロトコル です。

正式には IEEE 802.1w で標準化されています。

なぜRSTPが必要か

従来のSTPでは、リンク障害などが起きると再計算・再構築に約30〜50秒かかっていました。

Blocking → Listening → Learning → Forwarding
(15秒 + 15秒 = 約30秒)

この遅延は、音声通話やリアルタイム通信などに致命的です。
そこで、STPのアルゴリズムを改良して数秒以内で再収束できるようにしたのが RSTP です。

基本概要
項目STPRSTP
規格IEEE 802.1DIEEE 802.1w
再収束時間約30〜50秒数秒(通常1〜3秒)
ポート状態5段階3段階に簡略化
BPDUのやり取りルートブリッジから一方向各スイッチ間で双方向通信
ポートロール3種類5種類(新ロール追加)

●ポートの状態(簡略化されました)

STPの5段階:

Blocking → Listening → Learning → Forwarding → Disabled

RSTPでは以下の3つに統合されました

状態内容
Discardingフレーム転送せず(STPのBlocking+Listening)
LearningMACアドレスを学習中(転送しない)
Forwardingフレーム転送可能

➡ 状態遷移がシンプルになり、より高速な切り替えが可能。

●ポートの役割(新しいポートロールが追加された)

ポートロール説明
Root Port (RP)ルートブリッジへの最短経路ポート(STPと同じ)
Designated Port (DP)セグメントで転送を担当するポート
Alternate Port (AP)予備の経路ポート(RP障害時に即昇格)
Backup Port (BP)同一セグメント内の予備ポート
Disabled Port管理的に無効(shutdown状態)

Alternate/Backupポートが新しく導入され、
ルートやリンク障害時に即座に切り替えが可能になりました。

●RSTPの高速収束の仕組み

RSTPが高速な理由は、
BPDUの双方向通信とポートの即時役割判断にあります。

🔹 STPの場合

  • BPDUはルートブリッジから下流方向へ「周期的に」流れるだけ。
  • 下位スイッチは待つしかない(受け身)。

🔹 RSTPの場合

  • 各スイッチが独自にBPDUを生成・交換
  • ポートが「すぐにForwardingして良いか」をハンドシェイクで即決。

●ポートハンドシェイクの種類

種類意味
Proposal(提案)「私はフォワーディングしていい?」
Agreement(合意)「OK、あなたもフォワーディングして良い」

双方向BPDU交換によって、
ルート経路の切り替えが数秒以内で完了します。

●まとめ

項目内容
名称Rapid Spanning Tree Protocol
規格IEEE 802.1w
目的STPの高速化・即時切替
再収束時間数秒(通常1〜3秒)
新機能Alternate Port / Backup Port、BPDU双方向通信
Ciscoコマンドspanning-tree mode rapid-pvst
後継MSTP(Multiple STP)=VLANグループ化対応版

STP が「安全だが遅い」ループ防止方式なら、
RSTP は「安全かつ高速」な次世代ループ防止方式です。

STPが30秒かかる再収束を、RSTPなら1〜3秒で完了します。