STPは、スイッチ間のループ防止を目的としたL2プロトコルです。
しかし、VLANが導入されると「VLANごとに経路を最適化したい」というニーズが生まれました。
そこで、複数のSTP方式が登場します。
| CST(Common Spanning Tree) |
概要
- IEEE 802.1Q(標準VLAN規格)で定義される 標準的なSTPモード
- 全VLANに対して1つのSTPインスタンスしか持たない
- VLANを区別せず、1本の共通ツリーを構築する
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|
| VLAN単位のSTP | なし(全VLANで共通ツリー) |
| ルートブリッジ | 全VLANで1つ共通 |
| 経路分散 | 不可(全VLAN同じパス) |
| 負荷 | 軽い(STPインスタンス1つだけ) |
| 標準化 | IEEE標準(ベンダー共通) |
メリット・デメリット
シンプルで設定が簡単
VLAN単位での経路最適化・負荷分散ができない
| PVST(Per VLAN Spanning Tree) |
●概要
- Cisco独自拡張(ISLトランク用)
- VLANごとに独立したSTPインスタンスを持つ
- 各VLANで異なるルートブリッジや経路を設定できる
VLAN 10 → SwitchA がルート
VLAN 20 → SwitchB がルート
➡ VLANごとに異なるSTPツリーを構築できる。
●特徴
| 項目 | 内容 |
|---|
| VLAN単位のSTP | あり(VLANごとに独立) |
| ルートブリッジ | VLANごとに設定可能 |
| 経路分散 | 可能(VLANごとに別パス) |
| 負荷 | 高い(VLAN数分のSTPインスタンス) |
| 標準化 | Cisco独自(ISL) |
●PVST+ との違い
| 名称 | トランク規格 | 説明 |
|---|
| PVST | ISL | 旧Cisco独自プロトコル。802.1Q非対応 |
| PVST+ | 802.1Q | PVSTを拡張し、IEEE準拠VLANとも互換を持たせたもの |
➡ 現在のCiscoスイッチでは、PVST+ が主流であり、単なる「PVST」と言う場合もほぼこれを指します。
| 項目 | CST (Common STP) | PVST (Per VLAN STP) |
|---|
| 標準 / 独自 | IEEE標準(802.1Q) | Cisco独自(ISL) |
| STPインスタンス数 | 1(全VLAN共通) | VLANごとに1つ |
| ルートブリッジ | 全VLAN共通 | VLANごとに設定可能 |
| 経路分散 | 不可 | 可能(VLAN単位) |
| 設定・負荷 | シンプル・軽い | 柔軟だが重い |
| 現在の主流 | MSTP(CST進化形) | PVST+(802.1Q対応版) |
●運用上のポイント
- 小規模・シンプルなネットワークでは CST でも十分。
- VLANを多用する中〜大規模ネットワークでは PVST+ が有利(VLANごとに負荷分散可能)。
- さらに進化した MSTP(Multiple STP) は、
VLANをグループ化して 複数のSTPインスタンスをまとめることができる。
→ CSTとPVSTの中間的存在。
| 比較項目 | CST | PVST |
|---|
| VLANごとにSTP分離 | できない | できる |
| 経路分散 | 不可 | 可能 |
| 負荷 | 低い | 高い(VLAN数依存) |
| 標準 | IEEE標準 | Cisco独自 |
| 使用トランク | 802.1Q | ISL |
| 現在の主流後継 | MSTP | PVST+ |