BGP clearコマンド


BGPの clear コマンドとは?

BGPピア(neighbor)とのセッションをリセットまたは再読み込みするコマンドです。

Cisco IOSでの基本構文は

clear ip bgp { neighbor | * } [soft | hard | in | out]

clearコマンドの種類(大きく2種類)

種類説明影響範囲
ハードリセット(Hard Reset)セッションを完全に切断して再確立大きい(経路再学習が必要)
ソフトリセット(Soft Reset)セッションを維持したまま経路情報を再適用小さい(ダウンなし)

ハードリセット(Hard Reset)

〇 コマンド例

clear ip bgp 192.0.2.1

または全ピアを対象に:

clear ip bgp *

〇 動作

  • 指定したBGPピアとのTCPセッションを強制的に切断
  • 再びOPEN → KEEPALIVE → UPDATE のハンドシェイクが行われる。
  • 経路情報はすべて削除され、再学習が必要。

〇 注意点

  • セッションが一時的にEstablished → Idleに戻る。
  • 大規模ネットワークでは、一斉に実行するとルーティング収束が乱れる

使う場面の例:

  • 誤ったneighbor設定を修正したあと、完全に再接続したい場合。
  • セッションが不安定・壊れている場合。

ソフトリセット(Soft Reset)

〇コマンド例

(1) 受信経路を再評価する(in方向)

clear ip bgp 192.0.2.1 in

(2) 送信経路を再送信する(out方向)

clear ip bgp 192.0.2.1 out

(3) 両方向(完全なソフトリセット)

clear ip bgp 192.0.2.1 soft

〇動作

  • BGPセッションを切断せずに、経路属性を再評価・再送信する。
  • ピアリングは維持されるため、ダウンタイムがない。
  • Policy(route-map、filter-list、prefix-listなど)を変更した際に使う。

使う場面の例:

  • route-map や prefix-list を変更したあと、反映させたいとき。
  • 経路フィルタを更新しても再接続せずに反映したい場合。

Route Refresh 機能(現在の主流)

BGPの近代的な方法では、ルータがピアに「もう一度経路情報を送って」とリクエストできます。
これはセッションを切らずに再送信を要求する仕組みで、
コマンドは同じく clear ip bgp … in/out で実現します。

よく使うコマンド一覧

コマンド意味備考
clear ip bgp *全ピアをハードリセット全経路再学習、慎重に!
clear ip bgp 192.0.2.1指定ピアをハードリセット小規模で使う
clear ip bgp 192.0.2.1 soft双方向ソフトリセット一般的
clear ip bgp 192.0.2.1 in受信ルートを再評価フィルタ変更時に最適
clear ip bgp 192.0.2.1 out送信ルートを再送信exportポリシー変更時
clear ip bgp * soft in全ピアにRoute Refresh要求安全に全再評価

状況確認コマンド

BGPセッションの状態を確認

show ip bgp summary

セッションが再確立すると「Up/Down」カウンタがリセットされます。

まとめ

種類コマンド例動作セッション断用途
Hard Resetclear ip bgp 192.0.2.1接続を切断・再確立あり完全再接続、問題修正後
Soft Reset (In)clear ip bgp 192.0.2.1 in受信経路を再評価なしフィルタ変更時
Soft Reset (Out)clear ip bgp 192.0.2.1 out送信経路を再送信なし送信ポリシー変更時
Route Refreshclear ip bgp * soft inルート再送信要求なし近代的で安全