パスアトリビュートとベストパス選択


BGP パスアトリビュート(Path Attribute)

BGPが経路を判断するために使う情報(属性)のことを パスアトリビュート と呼びます。

BGPで送られる経路(ルート)には、必ずこれらの属性が付いています。

パス属性の分類

BGPのパス属性は、大きく 4種類 に分類されます。

分類説明
Well-known Mandatory(必須属性)すべてのBGPルータで必ず認識・送信されるAS_PATH, NEXT_HOP, ORIGIN
Well-known Discretionary(任意属性)すべてのBGPルータで認識するが、送るかは任意LOCAL_PREF
Optional Transitive(任意・伝達型)未対応でも転送されるCOMMUNITY, AGGREGATOR
Optional Non-Transitive(任意・非伝達型)未対応なら破棄されるMED(Multi Exit Discriminator)など

主なBGPパス属性一覧

属性名種類内容比較方向
AS_PATHWell-known Mandatory経由したAS番号のリスト。ループ防止に使う。短い方が優先
NEXT_HOPWell-known Mandatory次のルータ(ネクストホップ)のIPアドレス
ORIGINWell-known Mandatory経路の生成元(IGP/EGP/incomplete)IGP < EGP < incomplete
LOCAL_PREFWell-known Discretionary同一AS内での優先度。大きい値ほど優先。大きい方が優先
MEDOptional Non-Transitive複数出口がある場合の優先度。小さい方が優先。小さい方が優先
COMMUNITYOptional Transitive経路にタグ付けし、柔軟な制御が可能。ポリシーに依存
ATOMIC_AGGREGATE / AGGREGATOROptional Transitive経路集約の情報
Weight(Cisco独自)最初に比較される。大きいほど優先。大きい方が優先
BGP ベストパス選択ルール(Best Path Selection)

BGPが複数の経路を学習した場合、
「どの経路を採用してルーティングテーブルに入れるか」 を決めるためのルールです。

show ip bgpコマンドで確認できます。

BGPルータは以下の順番で比較します。(Cisco基準)

優先順位比較項目条件・優先されるもの
Weight大きい方が優先(Cisco独自)
Local Preference(LOCAL_PREF)大きい方が優先(AS内の優先度)
Originated Route(自分が広告したルート)自分で生成した経路を優先
AS_PATH 長さ短い方が優先(経由ASが少ない)
Origin Type(ORIGIN)IGP < EGP < incomplete の順
MED(Multi Exit Discriminator)小さい方が優先(外部AS間比較)
eBGP > iBGP外部経路を優先
IGP Metric(次ホップまでのコスト)小さい方が優先(内部経路コスト)
Router-ID小さいRouter-IDのルータを優先
Neighbor IPアドレス小さいIPアドレスの隣接を優先
属性意味
WeightCisco独自。手動設定可能(neighbor x.x.x.x weight 200)特定ルータでの優先制御
LOCAL_PREFAS内共通の優先値(bgp default local-preference 200)AS全体の出口制御
AS_PATHAS65001 AS65002 AS65003通過AS数が少ない経路を選ぶ
MEDISP-A: MED 10 / ISP-B: MED 20小さい方(MED10)を優先
ORIGINIGP / EGP / incompleteIGP由来がもっとも信頼される